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e☆イヤホン秋葉原店に、高級ヘッドホン試聴コーナーができていたので、端から順に聴いてみました。それらの中で特に気に入ったのが、HiFiMAN Edition X と DENON AH-D7200 でした。

Edition X は中古でも良いお値段がしますので、一つ下のモデルである HE-560 が購入候補に上がってきました。HE-560 を東京で試聴できるお店は、調べた範囲では中野のフジヤエービックだけ。秋葉原で Edition X を試聴し、中野で HE-560 を試聴し、記憶頼りの比較で HE-560 に決めました。傷ありのセカンドオーダー品だったので、そこそこのお値段で入手できました。

私は、beyerdynamic T1 2nd Generation を愛用しているのですが、試聴時には HE-560 とキャラクターが似ているように感じました。さすがに同じ音のヘッドホンを複数所有してもしょうがないので購入検討時に慎重になりましたが、構造に大きな違いがあるし、じっくり聴けば使い分けができるだろう、という脳内西木野真姫ちゃん悪魔のささやきに負けました。

購入して改めてじっくり聴いてみると、T1 2nd との違いが色々見えてきました。

装着感

ヘッドバンドの長さ調整は、MAX から一つ縮めたところでジャストフィットしました。私以上に頭が大きな人はもしかしたら、長さが不足するかもしれません。

装着感は良好でイヤーパッドが顔にしっかりフィットします。しかし、側圧が強めでしばらく装着していると痛いというほどではないですが圧迫されて疲れてきます。使っているうちに緩くなっていくものなので、最初のうちはこんなものなのかもしれません。

装着感に関しては、総じて T1 2nd のほうが優れているように思います。僅差ですが。

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交換用イヤーパッドは、公式ショップから入手できるようですが、ヘッドバンドは取り扱っていないようなので、保護用にヘッドバンドパッドを2枚使ってカバーしてみました。

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鳴らし難い?

春のヘッドフォン祭で、HiFiMAN のブースの人に、HE-560 は HE-1000 以上に鳴らし難いと脅された(?)のですが、むしろそれが最後のひと押しになりました。鳴らし難い機材を鳴らせば、さぞかしすごい音がするだろうというヘソの曲がりの思いこみからです。

「鳴らし難い」と一口に言っても、鳴らし難さには種類があります。

ひとつは、ヘッドホンのインピーダンスが高い場合に、電圧が不足して音量が取れないものです。ゼンハイザー HD650(300Ω)や beyerdynamic T1(600Ω)が代表です。ひと昔前は、ポータブルプレイヤーやスマートフォンで、ボリュームマックスでも音が小さい…ということがあったようですが、最近の製品は駆動電圧が高いらしく、あまり問題にはならなくなってきたような気がします(高インピーダンスに対応した分、高能率のイヤホンで、S/N が悪くなるという弊害もあるようですが…)。駆動電圧の高い据え置きアンプでは、むしろ鳴らしやすい部類かもしれません。

もうひとつは、電力に対する能率が悪い場合です。電力を稼ぐために大量の電流が必要となり、プレイヤー・アンプの出力電流が不足します。HE-560 は、45Ω・90dB の低インピーダンス・低能率で、こちらの鳴らし難さとなります。

普段使っている据え置きアンプで鳴らしてみました。TI の TPA6120A2 というアンプ IC を両電源 15V で 2 つ使用した自作アンプです(正確にはキットを好みに合わせて改造したもの)。電圧・電流には余裕がある設計のはずなのですが、駆動できていない印象を受けました。スピード感がないばかりか、聴きたいところが良く聞こえず、ボリュームをいくら上げても満足できません。自分で回路に手を入れているので、設計上の疑うべきポイントは多々ありますが…原因は追々調査することとします。

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Pioneer U-05 は良い感じで鳴りました。ReplayGain の Reference level で曲を再生し、GAIN LOW の 3~3.5 目盛くらいが適切な音量であるように感じました。リケーブルしてバランス接続とすると、さらに余裕ができますが、アンバランス接続でもかなり駆動できてると感じました。

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CHORD Mojo はポータブルアンプですが、かなりパワーがあるようでなかなか良い感じで鳴りました。さすがに据え置きよりは苦しいようですが…。

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今回、もっともしっくりきたアンプは、バランス出力専用設計ヘッドホンアンプキットでありやす!でした。このアンプキットは作るのにそれなりに苦労したのですが、作ったままほとんど使わず、完全に置物化していました。HE-560 にぴったりとハマりましたので戦線復帰決定です。

リケーブル

ここに書いてあることを実践するときは、自己責任でお願いします。読んでもよくわからない人は、手を出さないでください。ショートして機材を破壊する恐れがあります。大変危険です!!

HE-560A

HE-560 付属ケーブルのヘッドホン側は、2.5mm ステレオプラグ×2になっています。ピンアサインは上図の通りで、T: Hot(+)、R: 未接続、S: Cold(-) となっています。ただし、ヘッドホン側はモノラルジャックが使われているようで、内部で R と S が接続されています。

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HE-560 のジャックは少し奥まったところにあるので、直径 8mm 以上のプラグは刺しこむことができません。

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私は、ヘッドホン間でケーブルを使い回せるように、手持ちのヘッドホンのほとんどを 3.5mm ステレオプラグで着脱する方式に統一しています。そこで、HE-560 でも 3.5mm ステレオプラグ仕様のケーブルを使うことを考えてみました。

3.5mm ステレオプラグをヘッドホン側で用いるときのピンアサインは、T: Hot(+)、R: Cold(-)、S: 未接続または GND というのが多いです。例えば、beyerdynamic やソニーのヘッドホンがこのアサインを採用しています。S が接続されているか否かはケーブルに依りますが、接続するメリットはほとんどないので、接続されていない物も多いです(ヘッドホン内部の金属部品を GND に落とすために S が接続されていることがあります。ただ、音質的に意味があるかのかわかりません。未接続でも私の耳には判別できませんでした)。

HE-560B

お手軽な手段として、市販の 3.5mm メス => 2.5mm オスの変換プラグを使用します。上図の真ん中のようなやつです。この手の変換プラグで安いものが Amazon で色々ありますが、不良品率がそれなりに高そうなので、余分に買っておくのが無難です。私が購入したものは、二つのうちの一つが不良品で、なんと、1~3 極が短絡していました。信頼性を重視すると、Victor の AP-127A がおススメです。外径が HE-560 の刺し込み口にぴったりで、まるで専用品のようです。

Victor ステレオミニジャック(3.5)- 2.5ステレオ超ミニプラグ [AP-127A]

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プレイヤー/アンプとバランス接続する場合は注意が必要です。S が未接続であることを確認し、その上で変換プラグを用いる必要があります。もし、S が GND に接続された物を変換プラグを用いて HE-560 に刺し込むと、ヘッドホン内部で Cold(-) と GND がショートし大変危険です。S が GND に接続されているときは GND 接続を切除するか、専用の変換プラグを自作するか、そのケーブルの使用を諦めるか、いずれかを選択しなくてはなりません。

アンバランス接続の場合は、Cold(-) と GND は同電位ですので、S が接続されていても、されていなくても(理想的には)同じことです。何も考えずに変換プラグを用いて接続すれば大丈夫そうです。

今回、約 10 種類の自作ケーブルを試してみましたが、HE-560 は銅線よりも銀線のほうが合っているように感じました。HE-560 には、オヤイデの 4N 純銀撚り線 10/0.12 (FEP被覆) を主に使っていくことに決めました。噂(?)のオーグラインも試してみたいところなのですが、高価なのでなかなか購入できません(2 メートルのケーブルを制作しようとすると、線材だけで 2 万円以上になります)。

インピーダンス

年度末にオーディオインターフェース TASCOM US-2×2 が安売りされているのを見つけて、思わず買ってしまいました。どうやら、新モデルとの入れ替えのタイミングであったため安売りされていたようです。自宅で録音できるようになりましたので、WaveGene / WaveSpectra を使って、ヘッドホンのインピーダンスを計測してみました。今回はアンプとヘッドホンの間に抵抗器を挿入し、電圧降下を計測することでインピーダンスを測定する手法を用いました。ARTA の LIMP と同様の手法だと思います。

以下はオーディオインターフェースによる簡易的なインピーダンス測定結果であり、正確な計測器で測定したものではありません。精度はさほど高くないということをお断りしておきます。

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HE-560 のインピーダンスは、低域から高域まで綺麗な直線です。おそらく、これが平面駆動型の特徴なのでしょう。公称 45Ω に対し、やや低めの値が出ていますが、精度的にはこんなものだと思います。きちんと校正しているわけではないので、数パーセントならば誤差と割り切っています。参考までに、DE-5000 という LCR メータで 1000Hz のインピーダンスを計測したところ 43.5Ω でした。

ちなみに、公称 45Ω とは公式ページに書かれているスペックを指しています。一方、説明書には 50±8Ω と書かれています。この ±8Ω は製造上のバラつきなのか、ロットの違いに依る物なのか…よくわかりません。ちなみに、InnerFidelity の計測結果は 43Ω となっております。

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参考ですが、ダイナミック型である T1 2nd のインピーダンスは上図のようになりました。少々ノイズが載ってしまいましたが、気にしないことにします。公称 600Ω ですが、100Hz 付近ではなんと 800Ω 近くもあります。CHORD mojo が 800Ω まで対応と謳っており、そんなヘッドホンないぞ!と一部で突っ込みが入っていましたが、ここにありました。

ヘッドホン同士でも桁が一つ違うのが面白いですね。

音質

「US-2×2」、「ヘッドホンアンプキットでありやす!」、「4N純銀撚り線」と HE-560 の組み合わせで聴いてみました。駆動が難しいヘッドホンなので、この組み合わせで 100% の実力が引き出せているのかはわかりません。

第一印象は、HE-560 はキャラクターが T1 2nd に似ているな…でした。どちらもモニター的で低音豊かな開放型です(T1 2nd はセミオープンですが…)。よくよく聴き比べてみますと、T1 2nd のほうが高解像度・濃厚・情緒的な鳴り方で、曲にどっぷり感情移入できます。一方、HE-560 はあっさり・自然で、録音品質や DAC・アンプなどの上流により依存する素直さがあります。

HE-560 は、癖がなくモニターっぽい音で、クリアかつ明瞭です。シャキシャキ鳴るので、気持ち良いです。解像度はそこそこで、粗探しができるような分析力はありません。空間は広く、定位も良いです。いわゆる重低音と呼ばれるような超低域は抑え気味で、沈み込むような深さはありませんが、低音はしっかり出ていて、暖色系の音です。高音の刺激はないですが、解像度がそこまで高くないので特に不満は感じません。リラックスして聴くことに適したヘッドホンという感じがします。

ジャンル問わずにオールラウンドに何でも聴けますが、暖色の音が似合うジャズや、自然さや空間の広さを活かせるオーケストラが特に良いです。私の場合、ジャズは手持ちの T1 2nd の濃厚サウンドが鬼のような強さを発揮しているので、HE-560 は専らオーケストラを聴く際に使用しています。HE-560 で聴くオーケストラは、なんだかものすごく贅沢に感じられます。空間の広がり方が自然なので、作られたようなニセモノ感がありません。

ネガティブな言い方をすると、突出したセールスポイントがなく、全体的に地味で面白味に欠けます。メインのヘッドホンとして積極的に据え置くには華やかさが足りない。むしろ、たくさんのヘッドホンやイヤホンを聴き続けて食傷気味の人が、毒抜きとして導入しやすいかもしれません。しかし、全体的なレベルは高く、じっくり聴くと、さすが 10 万円台!と思わせる良さがあります。微妙な比喩ですが、他の高級ヘッドホンの個性がモノ売りだとしたら、HE-560 の個性はコト売りに近い…と言えるかもしれません。

まとめ

HE-560 の鳴らし難さは本物です。アンプ自作派には、ぜひ挑戦していただきたいヘッドホンです。鳴らし切ることができれば、きっと素晴らしい経験ができるでしょう。すでにディスコン扱い?のようで春のヘッドフォン祭にもその姿はなく、そもそも試聴できるところが少ないのですが、見かけたら手に取ってみると思わぬ出会いとなるかもしれません。

ラブライブ!ハイレゾ配信からヘッドホン沼にはまり、すでに 2 桁のヘッドホンを買ってきましたが、気が付けば T1 2nd 以外は使わなくなっていました。しかし、今回導入した HE-560 とは長く付き合っていけそうな気がします。鳴らすのに苦労し、上流次第で良くも悪くもなるので、相性の良いアンプならば、もっともっと良くなるのではないか、という底知れぬ可能性を感じています。色々なアンプを試してみたいという、ますます金のかかりそうな欲求が沸々としてきます。

おまけ(予告?)

次は DENON AH-D7200 か PLYMA 01 か、あるいは、崖から夏色えがおで 1,2,Jump! する覚悟で KENNERTON ODIN か…。あとは、LASMEX L-85 の超低能率(86±3dB )も気になります。「極の音域 Hi-Res RIGEL」や、FOSTEX TH610  も割と好きな音だったので、いつか欲しいと狙っています。

いやいや、さすがにこれ以上ヘッドホンあっても持て余しちゃうし、冷静に考えると次はもうないかな…(毎度ヘッドホン買った後に言ってるセリフ)。次の無駄遣いはたぶん、アンプです。

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