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eBay で激安のヘッドホンアンプ A2-PRO を購入してみました。

A2-PRO は、beyerdynamic のヘッドホンアンプ A2 をリファレンスにして作られた中華アンプです。オリジナルの A2 は約 18 万円ですが、A2-PRO は中国から個人輸入することで、1 万円台で入手できてしまいます。

「パチモノなどけしからん!」という意見もあると思いますが、A2-PRO は単なるクローンではなく、クリーンルーム設計に近いものであると思われます。著作権や特許権の侵害はないのか…調べようがないので何とも言えませんが、部品から察する限りでは回路構成は古典的なものであり、問題となりにくいのではないかと想像されます。

A2ーPRO は低価格であるため、オリジナルの A2 から色々と機能が削られています。

  • 出力インピーダンス切換なし
  • ゲイン切換なし
  • ライン入力1系統のみ
  • ライン出力なし
  • リモコンなし
  • ヘッドホンスタンドなし

出力インピーダンス切換がないことは個人的に残念ですが、機能を削減することで、ヘッドホンアンプ本来の役割にスリムダウンしているように感じます。

eBay では完成品のほかに、キット品が売られていますが、差額は 3,000 円程です。そこそこ部品数が多いので、完成品を買ったほうがお得な気がします。または、改造や作ることそのものを目的とするならば、キット品を購入するのが良いでしょう。

私が購入した A2-PRO は、USB DAC 機能が装備されていました。この USB DAC は、USB レシーバが USB Audio class 1 であるものの、ES9023 を積んでおります。しかし、鳴らしてみると高音で謎の音割れが発生し、使い物になりませんでした。これは後述する入力レベルと同じ問題かもしれません。

ライン入力ですが、赤が LEFT、黒が RIGHT でした。普通は、赤が RIGHT、白が LEFT です。ステレオ入力で黒は使いません。どうしてこういう配色なのかはわかりませんが、この配色のせいで最初に L/R を逆に接続してしまって、「何て不思議な空間表現なんだ!」と驚いていました。

ヘッドホン出力は二つあります。どちらも同じところに繋がっており、左右に違いはないようです。ヘッドホンを二つ同時に使用することはあまりないと思いますが、クロストーク対策の GND 分離に使えます。

発熱量はさほど多くなく、筐体がじんわりと暖かくなる程度です。

 

分解

外から眺めていても何の情報もないので、上蓋を外して中を覗いてみました。

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下手くそな写真で申し訳ないですが、全体図です。オリジナルの A2 とレイアウトが全く異なり、ただのクローンではないことがすぐにわかります。

(参考:独beyerdynamicからヘッドフォンアンプのフラグシップモデル「A2」が登場 – ITmedia LifeStyle

トロイダルトランス、整流ブリッジ、三端子レギュレータ×2、オペアンプ×2、トランジスタ×4、パワートランジスタ×4。なんとなく構成が想像できるのではないでしょうか。

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DAC 部です。DAC 部は、だいたい 44.1kHz 系と 48kHz 系の二つのクロックを積んでいるものですが、これは 12MHz の水晶発振器しかありません。この基板だけ別売りされているようで、eBay で ES9023 で検索するとそっくりのボードが出てきます。

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オペアンプは MC33078P という TI 製の物のようです。詳細はよくわかりません。

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出力段は前段が BC546/556 で後段が BD139/BD140 のようです。BD140 のエミッタ抵抗は 100Ω で、入力を短絡させたとき、0.61V の電圧がかかっていました。どうやら、AB 級のようです。

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赤枠で囲った抵抗器が出力に繋がっている?ようですが、テスターを当ててもどういう接続なのかよくわかりませんでした。

 

RightMark Audio Analyzer

RightMark Audio Analyzer(RMAA) 5.5 で測定してみました。接続は、Pioneer U-05 -> A2-PRO –> TASCAM US-2×2 で、ダミーロードはありません。

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パッとしない結果が出ました。Very poor や Poor が並んでいます。やる気が削がれます。しかし、ここで U-05 の設定をいじって、Line Out のレベルを落としてやります(すなわち、A2-PRO への入力レベルを落とします)。

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すると、THD が一気に改善しました。この差は、聴覚上でも明らかで、U-05 の Line Out レベルが fix(デフォルト)のとき、高音が割れてビリビリしますが、U-05 の Line Out レベルを下げて、A2-PRO のボリュームを最大にすると、高音の割れが発生しません。

どういうことなのかよくわからないのですが、A2-PRO には大きなレベルの信号を入れられないようです。常にボリュームをマックスにして、DAC 側で音量調整する使い方が適しているようです。

設計が元々おかしいのか、不良部品が混入しているのか、私がいじくった時に壊してしまったのか、いずれかはわかりませんが、私の手元にある A2-PRO は、どうやらまともではなさそうです。

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手元にある他のアンプと比べてみます。一番左はアンプを使わない、Pioneer U-05 -> TASCAM US-2×2 のダイレクト接続の測定結果です。2番目は、LME49600 を用いたアンプ(バランス出力専用設計ヘッドホンアンプキットでありやす!)、3番目は TPA6120A2 を用いたアンプ、一番右が A2-PRO の測定結果です。A2-PRO の特性の悪さが一目瞭然です。

 

出力インピーダンス

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A2-PRO の出力インピーダンスを電流注入法で測定した結果を上図に示します。BTL に見立てて、左右チャンネルを同時に測ったため、図中のインピーダンスは実際の2倍の値となっております。各チャンネルあたりのインピーダンスは半分の約 110Ω です。

最近は、1Ω 以下のヘッドホンアンプも少なくないので、100Ω 超というのは非常に大きな値です。計測方法が間違っているのではないかと、何度も確認してしまいました。オリジナルの A2 は、0Ω と 100Ω の切換が可能らしいですが、A2-PRO は切換機能がなく、どうやら 100Ω のほうを採用したようです。

 

音質

まず気付くのが空間の広さです。TPA6120A2 や LME49600 を用いたアンプはすごく綺麗なのですが、なんだか窮屈に感じることがありました。しかし、A2-PRO で空間が一段広がり、良い感じに聴こえます。空間が広がった分、像が分散してややフォーカスが甘い気もしますが、神経質にならなければそれほど気にならないと思います。ただ、総合的なレベルでは、IC を用いたアンプのほうが良さそうな気がします。

色々なヘッドホンと組み合わせて聴いてみましたが、beyerdynamic T1 2nd Generation がベストマッチでした。派生品とはいえ、やはり beyerdynamic のヘッドホンとは相性が良いようです。beyerdynamic のヘッドホンは、出力インピーダンスが高いアンプと相性が良いことが知られていますので、A2-PRO とはスペック的にもぴったりなのかもしれません。反面、手持ちの他のヘッドホンでは、A2-PRO を積極的に選択する理由がないように感じました。決して悪くはないのですが…。

これが 10 万超アンプの音だ!と言われれば、なるほどと思いますが、10 万円では私は買わないでしょう。価格の割にパンチが足りません。1万円台ならば、おもしろい選択肢だと思いますが…。

また、是非オリジナルの A2 と聞き比べてみたいところです。

 

まとめ

機能や音質がどうこうと言う前に、普通のラインレベルで音割れするという問題が痛すぎます。出力レベルを調整できる DAC と組み合わせて、低レベル入力するのがマストです。私の持っている個体がたまたまおかしいだけの話かもしれません…。売り物にならないレベルなので、是非そうあって欲しいところです。

原因究明のために、まずは VR を疑ってみようと思います。